医療過誤の法律相談,安田法律事務所 ☎ 045-651-9631

医療過誤事件について

医療過誤法律相談を受けるときの準備

医療過誤に関する法律相談のときには,お手元にある医療関係の資料(医師の診断書、手術の承諾書、病院の診察券等)や経過などについてご自分で書いたメモなどをお持ちください。弁護士が法律相談のときに医療事故の経過をお聞きします。法律相談だけで弁護士が医療過誤の有無を判断することは難しく、医療過誤の可能性のある場合でも,医療記録(カルテ、検査結果など)を入手して、その医療記録を中立的な医師に見ていただき、その意見を聞くことが必要です。医療過誤事件は必ず信頼できる医師から意見を聞くことが不可欠なのです。これが非常に重要です。誰も負ける裁判はしたくありませんし、安易な見込みで裁判にしてしまうと、依頼者にも、相手にも迷惑をかけてしまうからです。事件の見込みは正確にお伝えします。医療記録を改ざんされる危険があるときは医療機関に対し証拠保全を行います。

協力医師から医療過誤があるというアドバイスをされたときは、弁護士が間に入って交渉を開始します。話合いで解決できない場合は依頼者の方と相談のうえ裁判を起こすことになります。

当事務所には完全に独立した2つの相談室がありますので、相談の内容を他の相談者に聞かれる心配はありません。 医療過誤の法律相談を受けてから事件を依頼するかどうか決めてください。 なお、歯科に関する医療過誤事件は法律相談も含め扱っておりません。

医療過誤事件の注意

記憶が鮮明なうちに医療過誤の記録を残して下さい。手書きのメモでかまいません。年月日、治療行為、薬剤、医師が説明した言葉、看護婦の指示や説明など、不審に感じたら記録を残して下さい。ただし、もし、今も治療中のときは、医師や病院との信頼関係が失われると治療に差し支え、かえって悪い結果となりますので、くれぐれも慎重に行動して下さい。お互いの信頼関係がなくなると医療・治療は成り立ちません。そういう資料を法律相談のときにお持ちください。

医療過誤事件の難しい点

医療過誤事件の記録は全て病院にある

医療過誤の難しい点の一つは、ほとんど全ての証拠が相手方(医師・病院)の手中にあることです。そのため、医療機関が医療事故を隠すために診療録等の記録に意図的に手を加えた例が過去に存在します。また、医療機関によっては問題がある事例の場合は「記録の整理」と称するものを指導しているところがあるようです。 もし医療記録が改ざんれてしまうと、患者にとっては医療過誤の立証が不可能となることが考えられます。それを防ぐために裁判所を利用した「証拠保全」という制度があるのですが(弁護士に証拠保全を依頼することもできます)、「証拠保全」より前に記録が改竄されてしまうと意味がなくなります。そこで、医療機関に対し「医療過誤ではないか?」という問いかけをすることには慎重である必要があります。 医療記録の中で、手書きで作成する書類、たとえば、カルテ(診療録)や看護記録などは改ざんが容易ですが(後から書き入れたり、用紙ごとそっくり入れ換えてしまう)、X線写真などの写真類や血液検査の記録などは改ざんが難しくなります。そういう資料の質も考える必要があります。 最近は電子カルテが増えてきました。患者と面接しながら入力するのは面倒なので医師には不人気の様です。実際、分かりにくい電子カルテもあります。

医学的知識の必要性(患者側弁護士が不利な点)

医療過誤で何が起きたのかを理解するためには、医学という高度に専門的な分野における知識が必要です。それも医学の一般的な知識で対応できるものから、薬学の知識が必要なもの、特定分野における専門的知識が必要な場合もあります。 弁護士は医師ではありませんから、事件ごとに医学書を買い、論文を検索し、医師の助言を得て事件を処理します。医学は幅広い知識を要するので、医学の素人である弁護士がどんなに勉強しても限界があります。医師の助言が不可欠です。 患者側の弁護士がこの点で苦労するのと比較して、医療機関側の弁護士は常に医療機関の医師から、いくらでも援助を得られるので非常に有利です。医療機関は当事者ですから、必ず医療機関に有利になる論文を探してきます。この力の差を跳ね返すのは、優れた協力医の存在と弁護士の熱意、そして証拠に裏打ちされた「事実」です。 医療過誤は訴訟になると、医療機関側が専門的知識をフルに活用して特殊な医学的議論や、医師の裁量論に持ち込もうとすることもよくあります。相手になる病院はもともとが医学の専門家ぞろいですから双方には実質的に大きな差があり公平とはいいがたいのです。

医療過誤事件では、患者側協力医の確保が難しい

患者側の立場から医療記録を見て公平な医学的意見を述べてくれる医師を見つけることが難しく、さらに訴訟において意見書等を発表してくれる医師はなお探すのが困難です。 その理由は、医学界の閉鎖的体質、医師仲間をかばう傾向、公平とか正義という観念に対する意識の低さなどが影響していると思います。医師は同じ出身大学の先輩・後輩を批判することはあまりしません。また、たとえ大学は違っていても同じ学会に所属して交流がある場合もあります。さらに、それまでに勤務してきた病院で同僚だったとか、上司が共通だとか、色々な接点がありうるので、公平な立場にある医師を探すのは率直に言って難しいことです。 私の場合は、これまでに協力医をお願いしてきた医師もいますし、個人的に知っている医師も多いので、匿名の相談まではそれほど難しくありません。もちろん医師に対する謝礼は必要となります。 また、私たちは、神奈川医療問題弁護団に所属していますが、最近は医療過誤弁護団を経由して協力医を探すことも可能になりました。

医療過誤事件の進め方

相談者から弁護士が医療事故の事情を聴き取ります

当事者から事実経過を詳しく聞き、お手持ちの資料を弁護士が検討します。法律相談だけで医療過誤があったかどうかを判断することは非常に難しいですが、問題点を指摘し、少なくとも、次にどうすべきかをアドバイスします。

弁護士が裁判所に医療記録の証拠保全申立を行います

証拠隠滅の危険性が高い場合には、裁判所に対し、「証拠保全」という手続を申し立てます。証拠保全とは、医療記録の改ざんを防ぐために、裁判所の手続きで、予告無しに医療機関に出向き(厳密には2~3時間前に通知するので、絶対に改ざん不可能というわけでもありません)、診療録、看護記録、検査結果、写真等あらゆる医療記録を保全し記録することができる制度です。ただし、証拠保全をするためには、弁護士費用やカメラマンなどの費用がかかります。現在は、大きな病院では医療記録の開示制度が相当整備されてきていますので、証拠隠滅の危険が少ないときはそれを利用することもあります。 正式な電子カルテは、改訂記録が残るようにされています。

弁護士が医療過誤の有無について協力医の意見を聞きます

カルテ開示や証拠保全で集めた医療記録を、中立的な立場にある医師に見てもらい意見を聞きます。過失の有無、証拠の存在、因果関係、立証可能性、提訴の可能性などを慎重に検討する重要な場面です。 私は、この段階を慎重に行うことが医療過誤の流れの中では一番重要だと考えています。医師の話を全く聞くこと無しにこの先に進むことはしていません。もし、過失や因果関係の立証が困難な事件を提訴してしまうと、依頼者にも相手方病院や医師にも迷惑をかけてしまいます。この点は相当慎重に検討しています。ここを特に重視しているのが、私の進め方の特徴と思います。この段階で十分な検討をしておくと、裁判を避けられることもあります。医師に相談して意見を聞くときは、少なくとも3万円程度の謝礼は必要になります。

医療過誤があるときは,弁護士が医療機関と交渉します

医療機関に過失ありと判断される場合は、まず、医療機関側と話し合いを行います。この手紙の書き方も重要です。この段階ではあまり過失を決めつけず慎重に進めます。こういうところを雑にやると、事件がこじれて長期化する元になります。 ただ、最近は、過失が明白でも争ってくる医療機関と、そうでもない良心的な対応をする医療機関と二分されてきた気がします。 私は、医療過誤でも、基本的に話し合いによる解決を目指しています。裁判はできるだけしないで済むように、早い段階でできる限りの準備をします。裁判は民事紛争解決の最後の手段です。

裁判所に医療過誤訴訟を提起します

医療機関に過失があり、過失と損害が立証可能である、勝訴の可能性が十分見込めると判断された場合は、訴訟提起を検討します。医療事件の経験が不十分な事務所では、簡単に訴訟提起する事務所もあるようですが、医療過誤訴訟は、一旦、始まると主張、立証が非常に大変な裁判となるものですので、訴訟提起の準備を充分にすることが大切です。

医療過誤の裁判,医療過誤と立証責任

民事訴訟では、原告が請求の原因となる事実について立証責任を負います。たとえば、医師の過失、被害者の損害、過失から損害が生じたという因果関係、その全てについて立証責任を負います。そこで、医師の診療行為には適切と言い難い面があるけれども、それによって損害が生じたと言いにくい場合も発生します。たとえば、検査で進行癌を見逃し治療機会を失したけれども、たとえ適切な治療を受けていたとしても延命可能性が乏しいという場合です。癌を見逃されたことに対する患者本人あるいは家族の方々の怒りは大きいのですが、訴訟的に考えると立証が難しく、結局、比較的低額の解決金で終わることが多いようです。

医療過誤の裁判手続きはどうなりますか

医療過誤訴訟は民事訴訟の一つですから、原則として通常の民事訴訟と同じです。したがって、まず、
① 訴状提出
② 争点整理手続き
③ 立証(書証の提出や証人尋問など)
④ 和解手続き
⑤ 結審(和解できない場合)
⑥ 判決
という経過が一般的です。 ただ、いくつかの特殊性があります。
1 弁論準備手続きで主張の整理、立証計画等について入念な準備を行う場合が増えている。
2 立証の中で、鑑定を実施する場合が比較的多い。その他の事件と比べてという意味ですが。
3 当の医師が証人となり証言する。病院を訴えても医師を訴えない場合も多く、その場合は、医師は当事者的立場にありながら本来は客観的な立場にあるはずの「証人」となります。
4 保険会社・医師会の意向が裁判、和解に大きく反映される。
医師、病院の多くは医師会に所属し、医師賠償責任保険に加入していますので、その保険会社そして医師会の意見が大きく影響してきます。

医療過誤裁判にかかる時間

東京地裁の医療集中部では、1年強で解決することを目標にし、実際1年から1年半程度で解決していることが多いようです。これは相当のスピードです。ただし、鑑定を実施すると、まず、鑑定人探しに時間がかかり、鑑定自体にも時間がかかるのでもっと遅くなります。和解手続の進行によってはさらに時間がかかるし、また、争点の見えにくい事件もあるので、事件によっては3~4年かかることもあるかもしれません。

医療事件集中部

東京、大阪、千葉、名古屋、福岡の地方裁判所には、医療過誤事件を集中して審理する「医療集中部」があるため、そこで審理されます。「医療集中部」とは、医療過誤裁判だけを専門に扱うのではなく他の裁判も扱うけれども、この裁判所に提訴された医療過誤の裁判は全てこの部で審理されるというものです。横浜地方裁判所には特に医療専門部はありませんが、集中されるようになりました。 ※ 「部」 たとえば、横浜地方裁判所といっても、横浜市にある横浜地方裁判所本庁の他に、横浜地方裁判所の川崎支部、横須賀支部、小田原支部、相模原支部と4つの支部があります。また、裁判は、一人の裁判官で審理されることもあれば(単独事件)、3人の裁判官で審理されることもあります(合議事件)。横浜地方裁判所は一つの裁判所ですが、そこには単独、合議を含めると10以上の「民事部」があり、提訴された事件は順番にどこかの部に配点されて審理されます。

神奈川医療問題弁護団

神奈川県内の医療問題については,私も所属している神奈川医療問題弁護団に電話して法律相談を依頼することをお勧めします。弁護団では2人の弁護士が担当して法律相談を行います。

法律相談予約方法 (045-651-9631)

医療問題は神奈川医療問題弁護団に問い合わせることをお勧めしますが,当事務所の相談を受けることをご希望されるときは,法律相談の予約は事務所に電話して下さい。相談を希望される方のご都合と弁護士の予定を合わせて調整をします。電話でお気軽にお問い合わせください。平日の午前9時30分から夕方5時までが電話の受付時間です。昼休みや休日、夜間は留守番電話に録音してください。こちらから電話いたします。

弁護士 安田英二郎  

弁護士になって28年,市民,県民の多くの事件を扱ってきました。お気軽に相談してください。医療過誤事件の法律相談であっても初回相談料は,5,000円(税込み)の定額です。

最寄り駅は,関内駅,馬車道駅

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